夏の空を仰ぐ花
恋しくて
例えば、あの日。
南高に不法侵入なんてしていなければ、あたしが恋に落ちるようなことはなかったんだろうか。
そうすれば、こんなに切ない思いをせずとも済んだのかもしれない。
恋しくて、恋しくて。
恋がこれほどまでに切ないものだと知った日、あたしは16歳になった。
9月の終わりに、久しぶりに学校へ出て来た補欠は、少し痩せて、少し元気がなかった。
秋の地区大会で、南高野球部は初戦敗退に終わってしまったらしい。
それが原因なのだろう。
「補欠、補欠」
「……」
「補欠!」
「……うん」
話し掛けても、魂が抜かれたようなふぬけ声しか返って来ない日が、しばらく続いた。
補欠の席はあたしのひとつ前で、授業中は常に窓の外ばかり見つめて、ぼんやりしてばかりいた。
その横顔を見ていると、あたしの胸はギシギシ鈍い音を立てて泣いた。
地区大会後の補欠は、急激に男の顔つきになった。
この地区大会期間中に、何か気持ちに変化でもあったのだろうか。
そして、あたしもあの球技大会以来、拍子抜けしてしまっている。
明日、また来ます。
と言い去ったくせに、球技大会当日、涼子さんが補欠の前に現れることはなかった。
南高に不法侵入なんてしていなければ、あたしが恋に落ちるようなことはなかったんだろうか。
そうすれば、こんなに切ない思いをせずとも済んだのかもしれない。
恋しくて、恋しくて。
恋がこれほどまでに切ないものだと知った日、あたしは16歳になった。
9月の終わりに、久しぶりに学校へ出て来た補欠は、少し痩せて、少し元気がなかった。
秋の地区大会で、南高野球部は初戦敗退に終わってしまったらしい。
それが原因なのだろう。
「補欠、補欠」
「……」
「補欠!」
「……うん」
話し掛けても、魂が抜かれたようなふぬけ声しか返って来ない日が、しばらく続いた。
補欠の席はあたしのひとつ前で、授業中は常に窓の外ばかり見つめて、ぼんやりしてばかりいた。
その横顔を見ていると、あたしの胸はギシギシ鈍い音を立てて泣いた。
地区大会後の補欠は、急激に男の顔つきになった。
この地区大会期間中に、何か気持ちに変化でもあったのだろうか。
そして、あたしもあの球技大会以来、拍子抜けしてしまっている。
明日、また来ます。
と言い去ったくせに、球技大会当日、涼子さんが補欠の前に現れることはなかった。