夏の空を仰ぐ花
「花菜ちん……あたし……」


涙のダムが決壊。


奥から奥から、とめどなく涙があふれて濁流になった。


あんなふうに感情的な補欠は、初めてだった。


怖かった。


別人みたいだった。


補欠に嫌われてしまったかもしれない。


もう、目も合わせてくれないかもしれない。


もう、優しい目をして、あたしを見てくれることはないかもしれない。


あたしと話してくれないかもしれない。


下足棚の前で立ちすくみ、あたしは声を上げて泣いた。


「もうだめかもしれーん! あああーっ」


悔しい。


でも、この種を撒いたのは、この愚かなあたしだ。


ボタボタ、涙が床に落ちる。


「うあああーっ」


人目もはばからず全力で声を上げて泣くあたしを、花菜ちんがギョッとして見つめる。


「翠ちゃん」


花菜ちんの小さな手が、そっとあたしの左手を掴んだ。


「響也と、何かあったんでしょ」


「補欠に……嫌われたかもしれん! わああー」


「行こう。教室」


ほんと、世話のやけるふたり、と花菜ちんは号泣するあたしの手を引いて、歩き出した。











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