夏の空を仰ぐ花
「マネージャーがこんなこと言って、最悪だよね」


フフフ、と花菜ちんは面白そうに笑った。


「でも、響也なんだと思う。今は、2年生の本間先輩がエースだけど。次は響也なんだと思う」


そう言って、花菜ちんは椅子に座り直した。


「響也のこと、悪く言う部員はひとりもいないの。紅白戦でズタボロに打ち込まれて負けても、誰も響也を責めたりしないの。誰も、響也に文句なんて言えないもん」


響也ほど陰で努力してる部員はいないから。


歯を食いしばって努力してる響也を、みんな見てるから。


「だから、誰も何も言えないんだと思う」


花菜ちんはマシンガンのように、楽しそうにべらべらと話し続けた。


毎朝、誰よりも早く来て、朝練。


練習が終わったあとも、ひたすら自主練。


ひたすら野球にかまけてるくせに、成績は野球部で一番良くて。


野球も勉強も、響也が弱音を吐いたとこなんて見たことない。


いっつも無表情で比較的無口で、感情は表に出さないし。


「だけどね、響也、やるときゃやる男だから。ここぞって時には、必ず決める男だから」


そう言って、花菜ちんは、ボロボロ涙をこぼすあたしに微笑んだ。


「だから、大丈夫なんじゃない?」


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