夏の空を仰ぐ花
「何が……大丈夫だと言うのかね?」


グズグズ鼻をすするあたしに、花菜ちんは意味深に笑いかけてきた。


「何も考えてなさそうに見えるけど、響也はちゃんと考えてるんだと思う。いろんなこと。響也、物事を投げ出したりするような男じゃないもん」


「……よく分からん」


プーッと吹き出して、花菜ちんは手加減なしにあたしの肩をバッシバシ叩いた。


「響也もなかなかだけど、翠ちゃんもなかなかどーして。いい勝負だわ、こりゃ」


「どういう……意味かね?」


「こりゃいいわあ!」


ワアーッハハハ、と花菜ちんがひっくり返りそうに笑うから、ギョッとしてしまった。


「なんだ? すんげえ楽しそうだな、花菜」


その時、教室に顔を出したのは、


「ああ! 健(たける)」


花菜ちんの彼氏だった。


岸野 健、野球部で、一年生のまとめ役らしい。


彼はあたしを見るなり、軽く会釈して、花菜ちんに言った。


「今日の練習、4時からだって。二年対一年の紅白戦。だから、得点板出しとくようにってさ。監督から」


「分かった! ありがと」


「おう。じゃあ部活でな」


と岸野くんは爽やかに立ち去った。


あたしは花菜ちんの嬉しそうな横顔を見つめて、本音をもらした。


「いいな、花菜ちん。うらやましい。彼氏と仲良しでさ」


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