夏の空を仰ぐ花
自分がどこに居るのかさえ、よく分からなくなってくる。


あたしはしゃくりあげながら、


「すまん。今日はもう帰る」


声を絞り出した。


「補欠のことが……好きで好きで……もう、限界なのだ!」


立ち尽くすふたりに背を向けて、あたしは教室を飛び出した。


教室を飛び出してトイレに駆け込み、個室に閉じこもった。


これは無理かもしれないと思ったからだ。


このまま走ったら倒れると思った。


自分でも信じられないほどの大量の涙が出て、足が覚束なくなっていた。


さすが、ナミダ王国の王女という経歴を持つ女だ。


体内の水分が全部出て干からびてしまうんじゃないか、と少し心配になった。


泣きすぎたせいか、鼻が詰まり頭痛がした。


トイレを出ると、なぜだか教室に足が向いた。


もうみんな下校したあとの廊下は静かで、ただっ広く感じる。


重たい足を引きずるように教室に戻ると、もう17時を回っていた。


がらんとした、無機質な空間。


教卓の上にはガラスの花瓶があって、風紀委員が生けたかすみ草がたっぷりとあふれていた。


壁を埋め尽くす、掲示物。




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