夏の空を仰ぐ花
カツ、コツ、と時を刻む時計の秒針の音がむなしく響いていた。


窓際後ろから3番目の席。


補欠はこの席に座って、気付けばいつも窓の外を見つめてばかりいる。


晴れていると、今すぐ外に飛び出したそうに瞳を輝かせて。


雨が降っていると、つまらなそうにぼんやりして。


あたしがちょっかいを出すとハッとして静かに振り向く。


それで、微かに微かに、笑う。


優しい目を半分にして。


あたしは自分の机に鞄を置いて、補欠の椅子に座った。


補欠の真似をして、左手で頬杖をついて窓の外に視線を促す。


窓の外はすっかり秋の黄昏色で、薄暗くなっていた。


広々とした芝生の中庭。


秋になって花壇は殺風景になった。


補欠はこうして、毎日、この場所からこんな景色を眺めているのか。


真後ろであたしが見つめていることに、補欠は気付いていないのだろう。


いつも、野球のことばかり考えているに違いない。


あたしがいつも補欠を想ってばかりいるように。


秋は猛スピードで日が暮れていく気がする。


カタン。


あたしは椅子を立ち、窓を全開にした。



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