夏の空を仰ぐ花
一年前の今日。
たしか、時間帯もほとんど同じだった。
近くの廃墟に忍び込みに行った父を、あたしたちは待ちくたびれていた。
母が半日かけて作ってくれた巨大なバースデイケーキを前にして、みんなで待っていた。
ちょうど19時を過ぎた頃、突然、自宅の電話がけたたましく鳴り響いた。
まるで、サイレンのように。
あたしはぐずる茜と蒼太をあやしていて、母が受話器をとった。
「はい、吉田です……ええ。吉田達明は夫ですけど」
茜と蒼太をあやしながら母の横顔を見つめていたあたしは、独特な胸騒ぎにかられていた。
「……ちょっと……待って……何かの間違いだろ!」
みるみるうちに青くなり、終いに顔面蒼白になった母は、
「……たっちゃ……」
ゴトリ、とフローリングに受話器を落として、魂を抜かれたようにへたりと座り込んだ。
「何だ、誰から電話?」
「……翠!」
あたしを見た母の顔を見て、背筋にぞくりとしたものが走った。
真っ暗で、どっしりと座っていて、どこを見ているのか検討もつかない目を、母はしていた。
「翠……たっちゃんが死んじゃった……」
たしか、時間帯もほとんど同じだった。
近くの廃墟に忍び込みに行った父を、あたしたちは待ちくたびれていた。
母が半日かけて作ってくれた巨大なバースデイケーキを前にして、みんなで待っていた。
ちょうど19時を過ぎた頃、突然、自宅の電話がけたたましく鳴り響いた。
まるで、サイレンのように。
あたしはぐずる茜と蒼太をあやしていて、母が受話器をとった。
「はい、吉田です……ええ。吉田達明は夫ですけど」
茜と蒼太をあやしながら母の横顔を見つめていたあたしは、独特な胸騒ぎにかられていた。
「……ちょっと……待って……何かの間違いだろ!」
みるみるうちに青くなり、終いに顔面蒼白になった母は、
「……たっちゃ……」
ゴトリ、とフローリングに受話器を落として、魂を抜かれたようにへたりと座り込んだ。
「何だ、誰から電話?」
「……翠!」
あたしを見た母の顔を見て、背筋にぞくりとしたものが走った。
真っ暗で、どっしりと座っていて、どこを見ているのか検討もつかない目を、母はしていた。
「翠……たっちゃんが死んじゃった……」