夏の空を仰ぐ花
茜と蒼太を母の実家に預けて、あたしと母は放心状態のまま、病院の霊安室に向かった。
「父! 父! 目え開けてよ! 父ー!」
父はもうすっかり冷たく冷え切っていて、二度と目を開けてはくれなかった。
あたしと母がどんなに泣き叫んでも、その大きな腕で抱き締めてくれることはなくなってしまった。
大型トラックの居眠り運転が原因だった。
夜の廃墟に侵入した帰り道、父が歩いていた歩道に時速80キロで突っ込んで来たらしい。
父は、即死だった。
そう、父と変わらないくらい若い警察のひとが教えてくれた。
「事故現場は……コスモスの花びらでいっぱいになっていましたよ」
と、表情を歪めて。
「まるで花びらのじゅうたんみたいでした」
父はきっと、あたしたちに大量のコスモスを届けようとしていたんだと思う。
きっと、両手いっぱいに抱えて。
コスモスの花びらに囲まれて父がこの世を去ったのは、ちょうど一年前の、今日だった。
だから、もしかしたら、こうして夜の学校に居れば父がひょっこり出てくるかもしれないと、期待した。
できるなら、本当に会いたいと思った。
時計の針がちょうど19時を回った頃、ビュウッと強い風が窓から入ってきて、カーテンをぶわっと膨らませた。
「父! 父! 目え開けてよ! 父ー!」
父はもうすっかり冷たく冷え切っていて、二度と目を開けてはくれなかった。
あたしと母がどんなに泣き叫んでも、その大きな腕で抱き締めてくれることはなくなってしまった。
大型トラックの居眠り運転が原因だった。
夜の廃墟に侵入した帰り道、父が歩いていた歩道に時速80キロで突っ込んで来たらしい。
父は、即死だった。
そう、父と変わらないくらい若い警察のひとが教えてくれた。
「事故現場は……コスモスの花びらでいっぱいになっていましたよ」
と、表情を歪めて。
「まるで花びらのじゅうたんみたいでした」
父はきっと、あたしたちに大量のコスモスを届けようとしていたんだと思う。
きっと、両手いっぱいに抱えて。
コスモスの花びらに囲まれて父がこの世を去ったのは、ちょうど一年前の、今日だった。
だから、もしかしたら、こうして夜の学校に居れば父がひょっこり出てくるかもしれないと、期待した。
できるなら、本当に会いたいと思った。
時計の針がちょうど19時を回った頃、ビュウッと強い風が窓から入ってきて、カーテンをぶわっと膨らませた。