夏の空を仰ぐ花
風がひやりと冷たい。


「さみっ!」


やっぱり、もう秋なんだと改めて実感した。


ドライアイスのように冷たい風だった。


あたしは椅子を立ち、窓を乱暴にバンッと閉めた。


窓を閉めたとたん、暖房なんて動いているはずもないのに、ふんわりと温かくなったような気がした。


あたしは窓辺に立ったまま、暗い教室をぐるりと見渡した。


少し、期待しながら。


でも、どこにも父の姿なんてなかった。


当たり前か。


出てくるわけないか。


その時、バタバタと窓の外で音がした。


ハッとして振り向く。


そして、がっかりする。


「なんだよ……カーテンかよ」


もしかして、本当に父が出た、なんて期待してしまった。


閉めた窓からカーテンが半分はみ出して、夜風にバタバタと船の帆のようにはためいているだけだった。


あたしはもう一度窓を開けてカーテンを中に引き入れ、また乱暴にバンッと閉め直した。


閉めた瞬間に、その衝撃なのか何なのか、感情のスイッチをポンと押されたように、胸から一気に感情がこみ上げた。


あたしは補欠の席にすわり、突っ伏した。


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