夏の空を仰ぐ花

ふたりの距離

今年の冬はきっと、ものすごーく寒いんじゃないかと思う。


朝起きた時、なんとなくそんなことを思った。











翌日から、朝は補欠が迎えに来てくれることになった。


正直に言うと、あたしが無理やりそうさせた。


約束の時間に玄関を飛び出すと、無表情の補欠と目を点にした健吾が自転車にまたがってあたしを見つめた。


「モーニン、補欠!」


「うん」


「あ、ついでにバカ健吾、おはよ」


街路樹の葉に朝陽が射して、朝露がキラキラ輝いていた。


一夜明けて、本日も快晴。


あたしは鞄を自転車のカゴに押し込んで、補欠の後ろに飛び乗った。


「特権、特権!」


「はいはい」


と補欠が困ったように笑った。


「いやいや、響也……」


目を丸くした健吾が、放心状態で補欠を見つめる。


「これは、どういうことだね……」


健吾はあたしの家と補欠の顔を交互に見て、


「ここは翠の家かね……そして、これはどういうことなのかね」


とあたしを指差して固まった。


あたしは補欠の腰にぎゅうっと抱き付いた。


健吾がアホ面でぽかんとしている。


「見ての通りだ。翠と、付き合うことになったから」


そう言ってハハと笑った補欠をますます強く抱き締めて、あたしは健吾に白い歯を見せた。


「そういうことだ! 健吾」


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