夏の空を仰ぐ花
あの頃、あたしは一生分に値するほど泣いたかもしれない。
だから、これからは一生分に値するくらい。
いや、もっと。
来世の分まで笑っておかなきゃならない。
だから、あたしは、今日も笑うのだ。
4月3日。
東の空の袂が、清潔な光で明るく輝いていた。
出窓に朝陽が射し込む、6畳の部屋。
歯磨きと洗顔を終えたあたしは、ドレッサーの前に座った。
ギョッとした。
「いかん! なんじゃこりゃあー!」
鏡の中で、同じ顔の女が驚いた顔をしている。
「ギャッ! 誰だ! 名を名乗れ!」
あたしだ。
ひどい顔の、紛れもなくあたしだ。
昨日はあまり良く眠れなかった。
というより、全く寝ていない。
「ふむ……こりゃいかん。せっかくの美人が台無しじゃ」
鏡に映るすっぴんのあたしは、完璧に、ネブソク王国の女王だった。
「おお……なんと傷ましい」
涙袋の下に、クッキリと可哀想なクマが浮かんでいる。
カラカラに渇いた肌にたっぷりの化粧水を、これでもかとしつこく染み込ませた。
下地、コンシーラークマを隠してパウダーを叩く。
ベースメイクを施しただけなのに、ぐっと母に近づく顔立ち。
だから、これからは一生分に値するくらい。
いや、もっと。
来世の分まで笑っておかなきゃならない。
だから、あたしは、今日も笑うのだ。
4月3日。
東の空の袂が、清潔な光で明るく輝いていた。
出窓に朝陽が射し込む、6畳の部屋。
歯磨きと洗顔を終えたあたしは、ドレッサーの前に座った。
ギョッとした。
「いかん! なんじゃこりゃあー!」
鏡の中で、同じ顔の女が驚いた顔をしている。
「ギャッ! 誰だ! 名を名乗れ!」
あたしだ。
ひどい顔の、紛れもなくあたしだ。
昨日はあまり良く眠れなかった。
というより、全く寝ていない。
「ふむ……こりゃいかん。せっかくの美人が台無しじゃ」
鏡に映るすっぴんのあたしは、完璧に、ネブソク王国の女王だった。
「おお……なんと傷ましい」
涙袋の下に、クッキリと可哀想なクマが浮かんでいる。
カラカラに渇いた肌にたっぷりの化粧水を、これでもかとしつこく染み込ませた。
下地、コンシーラークマを隠してパウダーを叩く。
ベースメイクを施しただけなのに、ぐっと母に近づく顔立ち。