夏の空を仰ぐ花
初雪の日に
それからの1ヶ月は、まるで短距離走のように足早に過ぎて行った。
補欠は相変わらず野球に明け暮れてばかりいたし。
あたしはあたしで何かと忙しなかった。
11月に入るとぐっと気温が下がり、アウター無しでは外を歩くのが辛いくらいに冷え込むようになった。
空っ風が、胸にしみる。
遠くに見える山のてっぺんが粉砂糖をかぶったように、真っ白になった。
雪が近い。
あの粉砂糖があの山の袂まで下りてくると、いよいよ初雪が近いという証拠だ。
12月までの1ヶ月は、ただその空気に緊張の連続だった。
あっこと想い出を作ろうとクラス中が和気あいあいとするなか、健吾とあっこには重い空気が漂っていた。
あの日からふたりは一言も口をきかないどころか、一度も目を合わせようともしない。
あっこはただ、無理して空元気で。
健吾は明らかにわざとらしく、頭の線が切れたようにバカ元気だった。
でも、ふたりは目を合わせようともしない。
そして、時は残酷にも駆け足で過ぎ去り、12月6日。
その日はやけに底冷えして、朝から分厚い灰色の雲が広がっていた。
カラカラに乾燥した北風が、道端の枯れ葉をクルクル巻き込んで舞い上がる。
「さんびいー!」
ふわふわ、もこもこ。
淡い桜色の耳当てに手袋、マフラーをぐるぐる巻きにして、あたしは家を飛び出した。
「ハムニダー! 補欠ー!」
付き合って、もうすぐ2ヶ月になろうとしていた。
「うん」
今にも雪が下りて来そうな寒空の下だってのに。
補欠は相変わらず野球に明け暮れてばかりいたし。
あたしはあたしで何かと忙しなかった。
11月に入るとぐっと気温が下がり、アウター無しでは外を歩くのが辛いくらいに冷え込むようになった。
空っ風が、胸にしみる。
遠くに見える山のてっぺんが粉砂糖をかぶったように、真っ白になった。
雪が近い。
あの粉砂糖があの山の袂まで下りてくると、いよいよ初雪が近いという証拠だ。
12月までの1ヶ月は、ただその空気に緊張の連続だった。
あっこと想い出を作ろうとクラス中が和気あいあいとするなか、健吾とあっこには重い空気が漂っていた。
あの日からふたりは一言も口をきかないどころか、一度も目を合わせようともしない。
あっこはただ、無理して空元気で。
健吾は明らかにわざとらしく、頭の線が切れたようにバカ元気だった。
でも、ふたりは目を合わせようともしない。
そして、時は残酷にも駆け足で過ぎ去り、12月6日。
その日はやけに底冷えして、朝から分厚い灰色の雲が広がっていた。
カラカラに乾燥した北風が、道端の枯れ葉をクルクル巻き込んで舞い上がる。
「さんびいー!」
ふわふわ、もこもこ。
淡い桜色の耳当てに手袋、マフラーをぐるぐる巻きにして、あたしは家を飛び出した。
「ハムニダー! 補欠ー!」
付き合って、もうすぐ2ヶ月になろうとしていた。
「うん」
今にも雪が下りて来そうな寒空の下だってのに。