夏の空を仰ぐ花
ガチャリと音がして、焦げ茶色のドアから、
「……お……何だお前ら」
と目を丸くした健吾が出てきた。
ぜいぜいハアハア息を切らす補欠と、完全防備のあたしを見て、
「何だ、何事だ」
と健吾はキョトンとしていた。
息も絶え絶え、補欠が必死に声を絞り出す。
「時間……発車時間! 8時発の特急だって」
ぽかんとしていた健吾が、顔色を変えた。
大粒の目がぎょっと大きく開く。
「あれっ……携帯……あれっ」
健吾は学ランのポケットに手を突っ込んだり、ズボンを叩いたり、見るからにうろたえている。
「……あっ!」
どうやら携帯電話を忘れて出てきてしまったらしい。
現代っ子のくせに。
でも、それくらい、健吾は動揺して、いっぱいいっぱいだったのだろう。
家に引き返そうとした健吾を、補欠が引き止める。
「んな時間ねえよ! 今、7時半過ぎたぞ」
発車時刻は、8時2分。
ここから駅まで飛ばして15分というところか。
ギリギリだ。
紙一重だ。
もし、信号全てに捕まりでもしたら、間に合わないかもしれない。
それくらい瀬戸際、崖っぷちだ。
唇を噛んで、健吾が立ち尽くす。
「……もう間に合わねえよ」
「……お……何だお前ら」
と目を丸くした健吾が出てきた。
ぜいぜいハアハア息を切らす補欠と、完全防備のあたしを見て、
「何だ、何事だ」
と健吾はキョトンとしていた。
息も絶え絶え、補欠が必死に声を絞り出す。
「時間……発車時間! 8時発の特急だって」
ぽかんとしていた健吾が、顔色を変えた。
大粒の目がぎょっと大きく開く。
「あれっ……携帯……あれっ」
健吾は学ランのポケットに手を突っ込んだり、ズボンを叩いたり、見るからにうろたえている。
「……あっ!」
どうやら携帯電話を忘れて出てきてしまったらしい。
現代っ子のくせに。
でも、それくらい、健吾は動揺して、いっぱいいっぱいだったのだろう。
家に引き返そうとした健吾を、補欠が引き止める。
「んな時間ねえよ! 今、7時半過ぎたぞ」
発車時刻は、8時2分。
ここから駅まで飛ばして15分というところか。
ギリギリだ。
紙一重だ。
もし、信号全てに捕まりでもしたら、間に合わないかもしれない。
それくらい瀬戸際、崖っぷちだ。
唇を噛んで、健吾が立ち尽くす。
「……もう間に合わねえよ」