夏の空を仰ぐ花
「重っ」


何が入ってるんだ、と思わず中身を確認したくなるほど、ズッシリと重い。


補欠も健吾も、毎日こんな重いものを背負ってんのか。


「よっしゃ。落とすなよ」


そう言って、補欠が自転車に飛び乗った。


「任せろ!」


あたしと補欠は、学校という大きな存在を完璧に忘れて、健吾を追い掛けた。













駅は朝の通勤ラッシュと、他校の生徒が行き交ってごみごみしていた。


スーツのサラリーマンが北風に身を縮こませて、疲れのとれないさえない表情で改札を抜けて行く。


学ラン、ブレザー、セーラー服。


様々なデザインの制服を身にまとった他校の生徒たちが、ぞろぞろと行き交う。


健吾のスポーツバッグを背負っているあたしを見て、


「何あれー。変じゃね?」


「ウケるー」


「金パのギャルが、野球部のバッグしょってるし」


「南高の制服じゃん」


クスクス笑って振り返る。


でも、あたしはそれどころではないのだ。


ごみごみと人が溢れて行き交う中、あたしと補欠はキョロキョロして必死に健吾を探した。


「どこだー……おい、補欠! ちゃんと探せよ!」


「探してるって」


改札口付近のデジタル時計板が、7時45分と表示されていた。


奇跡だ。


15分以上はかかるだろうと思っていたのに、10分弱で到着したとは。


奇跡とは起きるものだ。


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