夏の空を仰ぐ花
「後先考えずに子供を作っても、まともに育てることができないのでは、お話になりませんよ」


びっくりした。


まさか、そんなことをいけしゃあしゃあと口にしたマジョにはもちろん。


でも、それ以上に、ふたりには開いた口が塞がらなかった。


ミソクソ言われけなされているっていうのに、ふたりは可笑しそうにクッと笑いをこらえて、毅然としていたから。


「あらまあ。先生、ご心配なく。うちの翠はまともですから」


ブフッ、とギャグマンガのひとコマのように吹き出した母のお腹には、その時すでに蒼太がいた。


「それにしても先生は素晴らしい方ですこと。まだ独身でいらっしゃるのに、子を持つ親にお説教だなんて」


いつもは絶対に使わないような言葉使いをした母は、まるでセレブマダムのようで。


『なに、すべて計画通りですよ。今回の翠の行動も、想定内でしたから』


と得意気に笑った父は、ハリウッドスターみたいにダンディーだった。


『先生もあけていらっしゃるじゃないですか、穴。ピアス、していますよね』


「……はっ?」



< 26 / 653 >

この作品をシェア

pagetop