夏の空を仰ぐ花
「母、ニューイヤー」


振り向いた母は、新年早々やはり美しい。


「おはよう、翠」


母はあたしの顔を見るや否や、眉間にシワを寄せた。


「どうした、娘。新年早々ひどい顔してんなあ。具合悪いのか?」


さすが母だ。


まさに、そうなのだ。


「すまんが、鎮痛剤を投与したいのだ。頭が痛い」


「なんだ? 夜更かししたか?」


母はリビングの棚から救急箱を出し、あたしに鎮痛剤をくれた。


一回二錠のソレを冷たい水で飲み込んで、あたしはソファーにうなだれた。


「まいったあ……今日は補欠と初詣の約束してんのに」


最悪の年明けだ。


こんな元旦を迎えたのは、生まれて初めてだ。


「みどりねえちゃん、あそぼうー」


「あしょぼ」


笑顔で寄ってくる茜と蒼太に申し訳なく思いながらも、


「頭痛いから、あとでな」


さすがのあたしも頭痛には勝てず、ソファーに沈んだ。


窓の外は明るかった。


雪は降っていなくて、お日さまが笑っていた。












「……んがっ」


どうやら、二度寝してしまったらしい。


しかも、自分のいびきで目を覚ますとは。


「んあー! 寝ちまったーい」


体を起こしてぐーんと伸びをした時、もう頭痛はどこかに吹っ飛んでいた。


「おお」


頭をぶんぶん振ってみる。


「痛くない! ビバ、頭痛薬」


「大丈夫か?」


母が見つめてくる。


「治った! 母、着物、着付けしてくれ」


そのあと、準備していた緑色の生地に花柄の着物を母に着付けしてもらった。


緑色は、あたしのラッキーカラーだ。


なにせ、名前がミドリだからな。


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