夏の空を仰ぐ花
窓から外を見ると、昨日降り積もった雪が大量に積もって、白銀の世界に生まれ変わっていた。


冬の淡い陽射しが新雪に降り注いで、ダイヤモンドが敷き詰められたように輝いていた。


「翠、頼みがあるんだけど」


そろそろ出掛けようとしていたところに、母がおチビふたりを連れてやってきた。


「母はこれから近所の集まりで神社に行かなきゃならんのだ」


「ほう」


「だから、このおチビどもをお供させてはくれまいか。補欠に聞いてみてくれ」


真っ赤な着物。


おかっぱ頭に、真っ赤な髪飾りの茜。


マルコメ頭に袴姿の蒼太。


「別に聞かなくても平気だろ。補欠は優しい男だし」


オッケー! とあたしはふたつ返事で笑った。


「ようし! 茜、蒼太。翠ねーちゃんにお供せよ」


「はーい!」


「あーい!」


ああ、たまらん。


なんとめんこいおチビどもか。


このかわゆさ、エベレスト級。


たまらん。


町で一番大きい八幡神社の赤い鳥居の前で、補欠は待っていた。


「やーい! 補欠ー!」


補欠はゆったりめのジーンズに青いダウンジャケット姿で、ニット帽をかぶっていた。


かわいいこぶをふたつぶら下げて現れたあたしを見て、目を丸くしていた。


「ニューイヤー! 明けたな、おめっとさーん!」


< 266 / 653 >

この作品をシェア

pagetop