夏の空を仰ぐ花
いつだったか、もう遠い昔のことのように思う。
あたしも、こんなふうに、父と母にわがまま言って甘えてばっかいたような気がする。
蒼太を肩に乗せ、茜の手を引いて、補欠が歩き出す。
「翠」
「あ?」
「何ニタニタしてんだよ。行くぞ」
「うん」
補欠。
もし、もしも、 だけどさ。
もし、あたしたちが結婚して、子供が産まれたら、こんな感じなのかな。
補欠は子煩悩で、優しい父ちゃんで。
いつも、あたたかい空気を作ってくれて。
なんて、補欠の隣で、あたしはそんなことを思っていたんだ。
2007年、元旦。
神様へ。
吉田翠の願いごと。
補欠がエースになれますように。
初詣を済ませて鳥居を出た時、ばったり健吾と隣のクラスの野球部の子とはち合わせになった。
「お、響也! ……おお、今日はちっこいのもいるじゃねえか」
健吾を見るなり、
「ケンケン!」
と茜と蒼太がはしゃいだ。
「おー、めんっこいなあ、おいおい」
表情を緩ませる健吾の隣で、彼はあたしたちを見てギョッとして固まった。
「響也……お前……」
「あ? どうした、イガ」
補欠は涼しい顔をして、彼を見つめていた。
「まさか、響也に隠し子がふたりも……?」
「はあっ?」
補欠がギョッと目を見開く。
ブフッ、と健吾が必死に笑いを堪えようとしていた。
あたしも、こんなふうに、父と母にわがまま言って甘えてばっかいたような気がする。
蒼太を肩に乗せ、茜の手を引いて、補欠が歩き出す。
「翠」
「あ?」
「何ニタニタしてんだよ。行くぞ」
「うん」
補欠。
もし、もしも、 だけどさ。
もし、あたしたちが結婚して、子供が産まれたら、こんな感じなのかな。
補欠は子煩悩で、優しい父ちゃんで。
いつも、あたたかい空気を作ってくれて。
なんて、補欠の隣で、あたしはそんなことを思っていたんだ。
2007年、元旦。
神様へ。
吉田翠の願いごと。
補欠がエースになれますように。
初詣を済ませて鳥居を出た時、ばったり健吾と隣のクラスの野球部の子とはち合わせになった。
「お、響也! ……おお、今日はちっこいのもいるじゃねえか」
健吾を見るなり、
「ケンケン!」
と茜と蒼太がはしゃいだ。
「おー、めんっこいなあ、おいおい」
表情を緩ませる健吾の隣で、彼はあたしたちを見てギョッとして固まった。
「響也……お前……」
「あ? どうした、イガ」
補欠は涼しい顔をして、彼を見つめていた。
「まさか、響也に隠し子がふたりも……?」
「はあっ?」
補欠がギョッと目を見開く。
ブフッ、と健吾が必死に笑いを堪えようとしていた。