夏の空を仰ぐ花
「いや……まいったな」


と彼が頬を赤くした。


「まさか、響也と翠ちゃんがそんなことまでする仲だったとは」


と言い出した彼は、隣のクラスの野球部、五十嵐(いがらし)くんだ。


通称、イガらしいが。


あたしはイガグリと呼ばせて頂いている。


ついに堪えきれなくなり、ブハーッと吹き出したのは、隠し子の正体を知っている健吾で。


補欠はあたしを見たとたん、ぼっと顔を真っ赤に染めた。


「なっ……んなわけねえだろ! へんな想像すんな! この子たちは」


と慌てて弁解を始めた補欠の前にずいっと出て、あたしはイガグリに向かってニヤリと笑った。


「その通りさ! あたしと補欠はすでに1から10まで全て済ませた仲だ!」


嘘だけどな、と心の中で言った。


「えっ! ままままじがあ?」


補欠に負けないくらいイガグリが真っ赤になった。


隣で健吾がひっくり返りそうになりながら爆笑している。


補欠が口をパクパクさせる。


「こっちが茜、こっちは蒼太。あたしと補欠の子だ」


補欠とイガグリが真っ赤になって固まる中、ギャーハハハと笑い転げそうな健吾。


「ち、違うんだって、まじで! 翠、何言ってんだよ」


挙動不審の補欠の腕をポンと叩いて、イガグリがニタニタ笑った。


「いいんだ、響也。今日は家族サービスしてやれよ、なっ」


「イガ! 勘違いすんなよ」


「いいんだ。おれたち、邪魔する気ねえからさ」


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