夏の空を仰ぐ花
「なんだ? 何か用か?」
「昼飯、どうすんの?」
「ああ。母は神社だし。あたしはこの通り料理できないし。ファミレス寄ってく」
「ふうん。ならさ」
と補欠は再び蒼太を肩車して、茜と手を繋いだ。
「来る?」
「どこに?」
見つめ合うあたしと補欠の横を、初詣に訪れた人たちが流れるように行き交う。
「おれんち、来る?」
補欠の家?
「え! いい! 元旦早々はさすがに」
いやいや、と左手をひらひら振ると、補欠がその手を捕まえた。
「ちょっとは察してよ」
「はっ?」
「おれ、明日からまた練習漬け」
「……だろうな。野球部だかんな」
何だ……どうしたってんだい。
補欠があたしの手を掴んで、察しろよ、と呟く。
「まだ翠と一緒に居たいんだよ」
「え……」
補欠は忙しい高校生だ。
肩に蒼太を、左手で茜の手を、右手であたしの手を引いて、雪道を歩き出した。
補欠の家は八幡神社の裏道を通ると、徒歩10分ほどのけっこう近場にあった。
緩い勾配に連なる、住宅街。
すぐ近くは河川敷になっていて、水辺に氷が張っていた。
「あ、ここ」
ガシャンと門扉を開けて、補欠が入って行く。
門に取り付けられた硝子細工をビスでとめた、透明な表札。
「昼飯、どうすんの?」
「ああ。母は神社だし。あたしはこの通り料理できないし。ファミレス寄ってく」
「ふうん。ならさ」
と補欠は再び蒼太を肩車して、茜と手を繋いだ。
「来る?」
「どこに?」
見つめ合うあたしと補欠の横を、初詣に訪れた人たちが流れるように行き交う。
「おれんち、来る?」
補欠の家?
「え! いい! 元旦早々はさすがに」
いやいや、と左手をひらひら振ると、補欠がその手を捕まえた。
「ちょっとは察してよ」
「はっ?」
「おれ、明日からまた練習漬け」
「……だろうな。野球部だかんな」
何だ……どうしたってんだい。
補欠があたしの手を掴んで、察しろよ、と呟く。
「まだ翠と一緒に居たいんだよ」
「え……」
補欠は忙しい高校生だ。
肩に蒼太を、左手で茜の手を、右手であたしの手を引いて、雪道を歩き出した。
補欠の家は八幡神社の裏道を通ると、徒歩10分ほどのけっこう近場にあった。
緩い勾配に連なる、住宅街。
すぐ近くは河川敷になっていて、水辺に氷が張っていた。
「あ、ここ」
ガシャンと門扉を開けて、補欠が入って行く。
門に取り付けられた硝子細工をビスでとめた、透明な表札。