夏の空を仰ぐ花
大文字のアルファベットが並んでいた。


【NATSUI】


その下に、


Takashi

Youko

Kyouya


と黒く彫られていた。


レンガの外壁の家は、補欠が醸し出すような静かな雰囲気を漂わせていて、玄関先には補欠の自転車と空っぽのプランターが何重にも重ねられてあった。


几帳面に雪かきが行き届いていて、歩きやすい道ができている。


補欠の父はたかしっていうのか。


母はようこ。


角松が飾られているインターフォンを補欠が押すと、


「ただいま。おれ」


間もなく、玄関のドアが開いた。


「お帰り。早かったね」


もっと遅くなると思ってた、と出てきた人は、笑ってしまうほど補欠とそっくりだった。


「ぶふっ」


やばいぞ。


この人が補欠の母、ようこか。


なんて……そっくりなんだ。


「えっ……あら? まあ……」


ようこはポケーンと口を開けて、補欠の肩に乗っている蒼太を見て、


「あらあら」


補欠の後ろで笑いを堪えるあたしと、


「まあまあ」


あたしの背後にひょっと隠れた茜を見て、


「この可愛らしいお嬢様方は?」


と補欠に首を傾げた。


「ああ、そうだな」


補欠は肩からひょいっと蒼太を下ろして、その小さなマルコメ頭をポンと撫でた。


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