夏の空を仰ぐ花
「ちえっ、つまらんなあ」


ズキズキ痛む頭をさすりながら、あたしはソファーに座った。


「そうだ。ベタといえば。いいもん見せてやるよ」


本棚の隅から補欠が持ってきた物は、中学時代のアルバムだった。


「ぎえーい! 貸せ! 貸せ貸せ貸せー!」


あたしは三日三晩エサを与えてもらっていない動物のように、それに飛びついた。


「おっと……危ねえなあ。飛びつくなよ」


あたしの迫力に補欠が目を丸くして、ストンと隣に座った。


「どこ! どこだ! あたしの補欠はどれ!」


あたしは乱暴にバラバラとページをめくった。


「あたしの補欠って……」


「お前はあたしの補欠だぞ! 違うか? いいから教えな」


補欠が苦笑いしながらヒントを出した。


「3年1組」


「コップンカー! (ありがとう)」


1組を開いて一番最初に目に飛び込んで来たのは、なぜか健吾で。


「ぶはーっ! なんじゃこりゃ、バカ丸出しー」


健吾を指差して笑うと、どれ、と補欠も覗き込んできた。


「ほれ! この健吾。アホー」


みんな口を閉じてにっこり微笑んで写ってるっていうのに。


健吾だけが口を開けてニヘーと笑っていた。


しかも、前歯が一本欠けていた。


それがツボでかなり笑えた。


「歯が欠けてる!」


「ああ、この時、健吾のやつ怪我してて」


< 282 / 653 >

この作品をシェア

pagetop