夏の空を仰ぐ花

補欠の中学の友達たちが寄せたメッセージを見て、直感した。


きっと、補欠はみんなに慕われていたんだ。


そう思った。


・３年間ありがとう

・野球ガンバレ

・消しゴムかしてくれてありがとう

・甲子園行けよ

・また遊ぼう



「なにこれ! 健吾らしいな！ キモッ」


・響也アイシテル 健吾


「ああ、だろ？ バカだよな、あいつ」


補欠にしては珍しく、ソファーにのけぞって豪快に笑った。


「アイシテルだって、キモー……お、これは？ なんか超深い意味がこもってる気がする」


・第９０回
全国高校野球選手権大会
地方大会
必ず決勝で会おう


チーム青春ライン 代表Ｓ


その寄せ書きを指差して、あたしは補欠に聞いた。


「なあ、これ。この代表Ｓって誰だ？」


ああ、と補欠が懐かしそうに微笑んだ。


「こいつな、いつもおれと健吾と常につるんでたやつ」


「へえ。Ｓは南高に来なかったのか？」


「うん」


「なんで？ もう野球辞めたのか？」


「辞めてねえよ。あいつが野球辞めたら、世界も終わる」


野球命の男だからな、そう呟いて、補欠は楽しそうに笑った。


分かりやすいよなあ、なんて思う。