夏の空を仰ぐ花
野球や仲間の話題になると、補欠の瞳はギラギラ輝く。


灼熱の太陽光線よりも熱く輝く。


「代表Sは、あの名だたる名門、桜花で野球に明け暮れてらあ」


「桜花……すげえな、おい」


桜花大学附属高等学校。


この野球に関してトンチンカンなあたしでさえ、腰が引けるほどだ。


桜花と言えば県で一番名が知れる、野球の名門、伝統校。


たぶん、知らない人はいない。


桜花と聞けば、ああ、野球強いよね、とみんなが言う。


高校野球と聞かれれば、桜花だろうね、とみんなが答える。


ツー、と、カー、みたいなもんだ。


チーム青春ライン 代表S


彼と顔を合わせる事になるのは、冬が終わりを告げて春になってからだ。


そして、いずれあたしは、Sの凄さを目の当たりにすることになる。


「……ん?」


その時、不意に飛び込んで来たのは、やけに目立つラメ入り緑色の丸文字。


緑色は、あたしのラッキーカラーなのに。


そのメッセージを見た瞬間に、なぜか嫉妬心を覚えた。


「これ……」


呟いて、あたしはアルバムの両端をぎゅっと掴んだ。


・夢を叶えて下さい
響也の隣はいつも温かかった 絢子


「あや……こ?」



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