夏の空を仰ぐ花
みんな、ありがとうとかガンバレとか、そういうメッセージばかりの中、この子のメッセージだけが違って見えた。


直感した。


絢子。


この子、何かしら補欠と関係があったな……。


「この子、誰!」


名前を指差しすと、補欠は「ああ」と一瞬言葉を詰まらせて、都合悪そうに目を反らした。


「三年の時、隣の席で、吹奏楽部だった子」


「それだけか?」


「……え?」


女ってのはカンが働く。


こういう時は、特に。


こういう時のその正確さは、98パーセント。


補欠は目をぱちくりさせた。


「正直に言え」


あたしは補欠を睨んだ。


「ただのクラスの女子じゃないんだろ」


ただのクラスメイトが、わざわざこんな事書くもんか。


夢を叶えて下さい。


なんて。


響也の隣はいつも温かかった。


なんて、書くもんか。


「まいったな」


急に表情を緩ませて、補欠が苦笑いした。


「お前は超能力者か」


「違う! 平成の黒魔術師だ」


なんで……あたし泣きそうなんだろう。


すごく、泣きたくなった。


ムカムカしてたまらない。


「こいつ、絢子」


と補欠がその名前を指差す。


ムカムカした。



< 286 / 653 >

この作品をシェア

pagetop