夏の空を仰ぐ花
情けないったら……。


みっともないったらない。


あたしはガキか。


でも、妬けて妬けて、どうしようもなかった。


例え、もう過去の事だとしても、悔しくてたまらなかった。


「手は繋いだけど」


「ふん。そっか。手か。ケツが青いな」


フンと鼻で笑い飛ばしてアルバムに視線を戻した時、


「何だ、やきもちか?」


小さく笑って、補欠があたしの頬に触れた。


「触るな! スケベ!」


あたしはその大好きな左手を、アルバムで思いっきり叩いた。


「いて……」


補欠が目を丸くして、あたしを見つめていた。


バカ。


あたしの心の方が何倍も痛いんじゃ。


補欠のあほう。


やきもちとは、恐ろしい感情だということを初めて知った。


グツグツ、グツグツ、腹の底から煮えたぎって、頭に血が登った。


なんで。


なんで……。


絢子の前に、あたしは補欠に出逢えなかったんだ。


「補欠なんか嫌い! バカ! ハゲ! スケベ!」


なんで、あたしじゃないの!


補欠が初めて好きになった女の子。


あたしじゃ……ないの。


今日のあたしは、やっぱり変だ。


朝の頭痛から始まって、さっきの階段の件も。


それに、なんで補欠の過去のことでここまで感情的になっているのか。


自分でもよく分からなかった。


「補欠のあほんだらあ!」


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