夏の空を仰ぐ花
窓の外はしんしんと雪が降っていた。


ファンヒーターのコーという音が虚しく響く。


涙がこぼれ落ちる直前に、あたしはとっさにうつむいて涙を隠した。


ぎゅっと握り締めるアルバムの表紙に、ポツポツと涙が落ちて水滴ができる。


「もう過去のことだろ。バカか」


補欠がソファーを立った。


「やだ! どこ行くの! 補欠う」


呆れ果てて、興醒めされたんだと思った。


「いや、どこって……」


顔を上げると、補欠はタンスからフェイスタオルを取り出していた。


「翠が泣くから。これ」


水色のタオルをあたしに差し出して、


「ほら、拭け」


とまた隣に座った。


「無理」


あたしは両手でアルバムを握り締めて、補欠を見つめた。


「補欠が拭いてくれ」


「……だって、嫌なんだろ? 絢子と繋いだ手は」


「……」


「しょうがねえよなあ。翠が嫌だって言うなら、もう触んねえよ」


ムスッとしている補欠の左手を、あたしは掴んだ。


「それはもっと嫌!」


ボロボロ、涙が止まらない。


「じゃあ、どうしろっていうんだよ」


意味わかんね、不機嫌に呟いて、補欠はあたしに背中を向けてしまった。


手を伸ばせば、すぐに触れる距離に補欠の背中があるのに。


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