夏の空を仰ぐ花
止まりかけていた涙が、一気に溢れた。


やっと、補欠がこっちを見てくれた。


「おれ、翠に触れられないの?」


優しい優しい目で、見てくれた。


「手、繋げないわけ?」


「……ちゅなぎまし」


狂ったように溢れる涙のせいで、ろれつが回らない。


「ちゅなぎましって……」


プハと笑って、補欠が両手であたしの両手を繋いだ。


「柄にもなく妬いてんじゃねえよ」


あたしの両手を握って、補欠が額に唇を落とす。


「ほけちゅ……しゅまん……」


「バカ」


窮屈なふたり掛けのソファー。


ヤキモチ王国の、ヤキモキ女王。


「しゅき……」


あたしは、ヤキュウ王国のホケツ王子にどっぷりのめり込んでいる。


「しゅきって……おれもだけど」


気付くとあたしの体は補欠の腕の中にすっぽりおさまっていた。


今は冬真っ只中なのに、補欠の腕の中は春が来たように、暖かかった。


「補欠、聞いてもいい?」


補欠の胸に体を預けていると、いつの間にか焦げた心は浄化され、透明になっていた。


「なに?」


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