夏の空を仰ぐ花
『己の信じる道を、真っ直ぐ行けよ。父は娘の行く道を信じるぞ』


夕焼け空に、ひつじ雲。


さわさわ揺れる草の隙間から、鈴虫の輪唱。


夏の終わりの風と、コスモスの絨毯。


秋の桜が、少し切ない茜空を仰いでいた。


その日の夕飯は、ふわふわ卵とやわらかい鶏肉の親子どんぶりだった。













「はっ! いかん!」


勉強机の上にあった携帯電話から、あゆの新曲が流れて我に返った。


開くと、


【新着メール 1件】


結衣からだった。





4/3 7:42
From 佐東 結衣
Sub おはよ!
――――――――――――――
9時15分に正門前で落ち合うべ。
クラス発表いっしょに見に行こうぜ☆







「了解、っとな」


すぐに返信して、出窓の外に広がる空を見上げた。


「Beautiful!」


ため息なんかもったいないほどの、晴天。


なのに、少しだけ自分に呆れているあたしがいた。


昨日から思い出すのは父のことばかりだ。


父との想い出ばかりがあふれてくる。


だから、昨日は眠れなかった。


おそらく、昨日のアレが原因だ。


そう直感した。



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