夏の空を仰ぐ花
「翠……?」


母と長谷部先生が同時に振り向いた。


あたしは母に詰め寄り、睨んだ。


「あたしも行く! 行く!」


これだから、大人は嫌だ。


あたしはもう、高校生なのに。


大人は高校生を子供扱いする。


「何だよ! あたしが知っちゃいけないような事か?」


何で隠す? とあたしは母を睨み付けた。


母は何も答えず、ただ唇を震わせていた。


「隠さなきゃならんことか! だったら尚更、本人のあたしが聞かなきゃいけないんじゃないのか?」


違うのか?


大人はまずいことを隠そうとしてばかりだ。


しかも、必死に。


この世界には、本人が知ってはいけないことがあるのか?


もし、そうだと言うのなら、そんな矛盾だらけの世界、あたしがぶっ壊してやる。


だって、おかしいじゃないか。


あたしの事なのに、あたしが知っちゃいけないなんて。


そんなことがあっていいのか。


絶対、おかしい。


間違ってる。


あたしは長谷部先生をギロリと睨み付け、


「お前も!」


次に前田先生を睨んだ。


「お前もだ!」


どいつもこいつも、一体、何なんだ。


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