夏の空を仰ぐ花
ぴょこぴょこ、うさぎのように跳ねると、茜のおかっぱ頭がサラサラ揺れた。


「みどりねえちゃん、すてきーっ」


茜が言うと、すかさず真似っこ王子の蒼太が続けた。


「みろりねえちゃ、しゅてきー」


泣いたあとの目をキラキラさせて、ついでに鼻水もキラキラさせながら。


「そうかそうか。そんなに似合うかあ」


うんうんと頷きながら、あたしはテーブルの上からティッシュを2、3枚とり、


「グッバイ、青っパナ!」


蒼太の鼻水を拭き取った。


「もう泣くのはおしまい! バスが来るぞー、急げ、急げ」


保育園指定の上着を羽織らせ、肩から鞄をぶら下げて、


「蒼太、今日もイケメンだなあ!」


と小さなマルコメ頭に黄色い帽子を被せてやると、


「はい! バシがくるじょー!」


と蒼太は元気にリビングを飛び出した。


バシ、だって。


可愛いにもほどがあるぜ、弟よ。


「あーん、まってえ、そうちゃん。あかねもいくよう」


とトタトタとおチビ姫もリビングを飛び出した。


15歳のあたし、4歳の茜、2歳の蒼太。


ふたりとは歳が離れているけど、あたしの自慢の妹と弟だ。


「翠」


キッチンで忙しなく洗い物を片しながら、母が振り向く。


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