夏の空を仰ぐ花
「ああ、戦友にな」
すぐ戻る、そう告げて、あたしは教室を飛び出した。
3月4日。
卒業式。
今日ばかりは後輩らしく、と、毎日念入りにセットする巻き髪は封印した。
真っ直ぐに下ろした髪の毛を、念入りにブローした。
毎日、だらしなく着崩している制服。
今日はなんだか、今日くらいはピシッと締めたくて、彼女のように清楚に着こなした。
あたしたちが住む海辺の田舎町も、そろそろ雪解けが始まり、春支度。
今日の空は薄い薄い水色で、外はなごり雪。
廊下を駆け抜けながら校庭を見ると、野球部や陸上部がグラウンドで先輩たちと記念撮影をしたり、じゃれ合っているのが見えた。
あたしはひとつ下の階の、3年C組の教室に飛び込んだ。
「たのもーっ!」
教室には数人しか残っておらず、がらんとしていた。
彼女が振り向く。
「え……翠ちゃん?」
あたしを見て、目を丸くした。
「いかにも! 吉田翠!」
胸元に揺れる、紅白のリボン。
水色の蝶ネクタイ。
固まる彼女に詰め寄って、あたしはキッと睨んだ。
「こんの、お涼め!」
抱えていた花束を、きゅっと抱きしめた。
「お……おりょう?」
「あたし、あんたのこと大っ嫌い!」
すぐ戻る、そう告げて、あたしは教室を飛び出した。
3月4日。
卒業式。
今日ばかりは後輩らしく、と、毎日念入りにセットする巻き髪は封印した。
真っ直ぐに下ろした髪の毛を、念入りにブローした。
毎日、だらしなく着崩している制服。
今日はなんだか、今日くらいはピシッと締めたくて、彼女のように清楚に着こなした。
あたしたちが住む海辺の田舎町も、そろそろ雪解けが始まり、春支度。
今日の空は薄い薄い水色で、外はなごり雪。
廊下を駆け抜けながら校庭を見ると、野球部や陸上部がグラウンドで先輩たちと記念撮影をしたり、じゃれ合っているのが見えた。
あたしはひとつ下の階の、3年C組の教室に飛び込んだ。
「たのもーっ!」
教室には数人しか残っておらず、がらんとしていた。
彼女が振り向く。
「え……翠ちゃん?」
あたしを見て、目を丸くした。
「いかにも! 吉田翠!」
胸元に揺れる、紅白のリボン。
水色の蝶ネクタイ。
固まる彼女に詰め寄って、あたしはキッと睨んだ。
「こんの、お涼め!」
抱えていた花束を、きゅっと抱きしめた。
「お……おりょう?」
「あたし、あんたのこと大っ嫌い!」