夏の空を仰ぐ花
「やだ! あたしは認めんぞ! やだーっ!」


その場でじだんだ足を踏むあたしに、補欠はいつになく冷静に言った。


「別に、もう二度と会えないってわけじゃねえんだから。AとEだろ。すぐじゃん」


「すぐ……って……」


なんで、補欠はそんなに冷静で、平気な顔していられるんだろう。


確かに、もう二度と会えないってわけじゃないけど。


すぐ、なんかじゃない。


一年間ずっと前後の席で、あんなに至近距離で学校生活を送ってきたあたしにしてみたら、この距離は果てしなく遠くて。


嫌で嫌でたまらないのに。




「健吾、お前も夏井と一緒にA組に行けよ」


「そうしろよ。夏井と椅子半分こして授業受けろ」


結衣と明里に言われて、健吾はクアーッと声を上げて立ち上がる。


「この跳ねっ返りどもが!」


なにー! 、何だとー! 、といがみ合う3人をよそに、あたしは補欠をど突いた。


「やだー! 無理! やだやだやだー!」


補欠の肩からスポーツバッグがずり落ちそうになる。


「やだって、んなこと言ったってしょうがねえだろ」


わがまま言うなよ、苦笑いをして補欠はスポーツバッグをひょいと背負い直した。


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