夏の空を仰ぐ花
「補欠は何で平気なんだ! あたしと離れちゃったんだぞ!」


怒鳴りながら睨むと、補欠は「平気じゃねえよ」と面白くなさそうにそっぽを向いた。


「おれだって嫌だ。翠と離れんのとか。やだ」


ぼそぼそと呟きながらふてくされたように、補欠がズボンのポケットに両手を突っ込む。


「嫌にきまってんだろ。何でわかんねんだよ」


「ほ……補欠ー!」


「えっ!」


「補欠ーっ! これも運命なのか? 離れなきゃならん、運命か!」


あたしは人目もはばからず、補欠に抱きついた。


「そんな運命やだ! あたしもA組に行くぞ! 連れてってくれ!」


「みっ……みど……離れろ! バカ」


同学年の生徒たちがクスクス笑いながら、あたしたちを見ていた。


「離れろ!」


抱き付くあたしを、補欠が必死に剥がそうとする。


「やめろって。みんな見てるだろ! アホか」


「んぎぎぎぎーっ」


あたしはめげずにもっと強くしがみついた。


「離れて……たまるかあーっ!」


補欠があたしの両肩を掴んで、引き離そうとする。


「みーどーりーっ……」


そのぶん、あたしはしがみついた。


「アロン……アルファーッ!」


ちくしょう。


こんなことなら、まじで全身にアロンアルファを塗りたくって来れば良かった。


「っだあーっ!」


補欠が声を絞り出した時、


「わっ。朝からラブラブ」


ひょっこり現れたのは、花菜ちんだった。


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