夏の空を仰ぐ花
少しつり上がり気味のキツネ目。


栗色でやわらかそうな、毛先が遊ぶ、ふわふわの髪の毛。


右耳たぶにさりげなく輝く、シンプルなシルバーピアス。


少しだけ着崩した、学ラン。


「隣の席になったのも何かの縁、ってことでひとつ」


よろしく、と蓮はにっこり微笑んだ。


「へいへい。どうもどうも、ご丁寧に」


なんか、鼻につく男だ。


蓮の第一印象はそれくらいなもので、


「ご苦労さん」


あたしは適当にかわして、目を反らした。


でも、まさか、この隣人が後にあたしに大きく関わってくる人物だったとは、まだ知らなかった。


クラスメイトたちは結衣と明里と健吾と蓮以外、本当ガリ勉ばかりで、つまらない。


一年の時のような和気藹々感なんて、微塵もなかった。


結衣も明里も、1Bに戻りたいと小言ばかりを漏らした。












半月後の昼休み。


あたしは午後から病院に行く前に、補欠に会いたくてA組を覗きに行った。


でも、後悔した。


猛烈に、後悔した。


「補欠!」


来るんじゃなかった、と。


「響也、その卵焼きくれよ!」


「えっ、ずるーい、イガ。響也、あたしにも」


一年の時も、補欠は密かに人気があった。


男子からはもちろん、密やかに女子からの支持は絶大だった。



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