夏の空を仰ぐ花
なんか、すっげー孤独を感じた。


クラスが離れて以前にも増して一緒の時間が少なくて、病気が発覚して。


二年になって、補欠はますます野球に熱が入って。


一気にいろんなことが重なって、孤独になった。


A組のひだまりの中心には補欠がいて、あたしはそれをうらめしげな目で指をくわえて見ているしかできなくて。


少し、みじめだった。


「え、あの、でも。夏井くんに用事があるんじゃないの?」


おどおどする男子を横目で睨むと、


「あっ……ごめん」


彼はビクビクしながら肩をすくめた。


何だよ……こいつまで。


そんなビクビクしなくてもいいじゃん。


あたしって、そんなに怖いか?


そんなに、違うのか?


……みんなと。


「なんで謝んのさ。とにかく、もういいから」


ごめん、あたしが呟くと、彼はレンズ越しに目を大きくさせて、くいっと眼鏡を押し上げた。


そうか、違うな。


明らかに、あたしはみんなとは違う。


同じ、16歳の高校二年生なのに。


違うもんな。


見た目はこの通りピンピンしてるってのに、あたしは頭に爆弾を抱えているようなものだ。


「悪かったね。昼飯の邪魔して」


きびすを返して廊下を歩いていると、前方からやかましい男が歩いてきた。


「おう、翠」


「……健吾か」


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