夏の空を仰ぐ花
そうか。


健吾が教えてくれたから、わざわざ追いかけて来たのか。


あたし、バカみたいだ。


なんでこんなふうにしか受け止められなくなっちゃったんだ……。


病気が発覚してから、あたしはどんな些細な事にも敏感になった。


まして、全部、皮肉めいて受け止めるようになってしまった。


口を一文字に結びうつむくあたしの肩を、


「来たなら、声かけてくれればいいのに」


無視すんなって、そう言って、ポンと補欠が叩いてきた。


その瞬間、あたしの体内で小規模な爆発があった。


「かけたさ!」


声を荒げて、あたしは補欠を突き飛ばした。


「かけたじゃん、声! 何度も何度も!」


豹変したあたしを見て、補欠が一瞬ギョッとした。


「なに……泣いてんだよ」


なに、だと?


泣いてんだ、だと?


野球ばっかの補欠に、あたしの気持ちなんか分からないだろうな。


「あたし、何回も何回も声かけたじゃん」


でも、補欠は気付いてくれなかった。


クラスメイトと楽しそうに談笑して、夢中だった。


あたしに、気づいてくれなかったじゃん。


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