夏の空を仰ぐ花
怒りを必死に抑え込んで、でも、すごく悲しそうな目だった。


ごめん、とひとこと言えていたら、補欠は笑ってくれていたのかもしれないのに。


跳ねっ返りのあたしには、それができなかった。


どうしてもできなかった。


今さっき言われたあの一言の衝撃は、隕石落下並の衝撃を、あたしに落とした。


なんか、疲れる。


睨み合うあたしと補欠の間に生まれた空気は、ピリピリパチパチと弾ける静電気のようだった。


「つうか、疲れんだろ? あたしと居ると、疲れんだろ?」


「はあ?」


「そんなに疲れんなら、あたしに構うなよ!」


突き放せばいいじゃんか。


もっと、こっぴどく。


いっそ、ことごとく。


突き放してくれたらいいのに。


そうでもしてくれないと、あたし分かんねえよ。


面倒くさいって、はっきり言えばいいだろ。


真顔で固まる補欠の手を、あたしは思いっきり振りほどいた。


「疲れるくらいなら、いちいち心配すんなよ!」


吐き捨てて、あたしは学校を飛び出した。


皮肉なものだ。


少し、期待していたのに。


すぐに追いかけて来てくれるんじゃないかって。


けれど、補欠が追いかけて来てくれることはなかった。





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