夏の空を仰ぐ花
あたしと出逢うことがなかったら、疲れることもなかっただろうに。


ごめん。


あたしはシートにもたれて、泣き続けた。


もうだめかもしれないと弱気になった。


さすがに今回ばかりは愛想を尽かされたかもしれない。


補欠は、あたしの全部だ。


夏井響也は、吉田翠の全てなのだ。


もし、彼に嫌われたら、あたしはこの先どうやって生きていけばいいのだろう。


15分ほどバスに揺られていると、がらんとした車内にアナウンスが流れた。


「次は、南台大学病院前。お降りの方はバスが停車してから……」


ポーン。


ボタンを押して、あたしは涙をのみ込んだ。


「ああ……しんどいぜ」


バスを降りると、やっぱり、上空は青く澄んでいた。


補欠。


あたしたちに、同じ未来は……ある?













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