夏の空を仰ぐ花
一番か特別か
例えば、大切なひと。
そのひとの一番になりたいか、それとも、特別になりたいか。
どちらかと問われたら、今までのあたしは迷うことなく、後者だった。
でも、今一度問われたら、前者になるだろう。
あたしが前者になるきっかけをくれたのは、優しい春の三日月と、補欠がくれたまぶしい言葉だった。
「吉田翠さん」
CTとMRI検査を終えて待合室で待っていると、診察室へ呼ばれた。
カーテンを開けて入って行くと、長谷部先生が食い入るように写真を見つめていた。
「うーん。今のところ、大きな変化はないなあ」
診察室の壁時計は、もう二時半をとうに回っていた。
「そっか」
ぽつりとこぼしたあたしを見つめて、長谷部先生がやわらかく微笑んだ。
「もう少し、様子を見る事にしようか」
「へい」
「あまりストレスをためるような生活はしないでね」
「……うん」
「と、言っても、無理な話だよね」
小さく笑った長谷部先生が、うつむくあたしの頭をぽんと弾いた。
大きな優しい手のひらだった。
「へ?」
顔を上げると、長谷部先生が気遣うように言った。
そのひとの一番になりたいか、それとも、特別になりたいか。
どちらかと問われたら、今までのあたしは迷うことなく、後者だった。
でも、今一度問われたら、前者になるだろう。
あたしが前者になるきっかけをくれたのは、優しい春の三日月と、補欠がくれたまぶしい言葉だった。
「吉田翠さん」
CTとMRI検査を終えて待合室で待っていると、診察室へ呼ばれた。
カーテンを開けて入って行くと、長谷部先生が食い入るように写真を見つめていた。
「うーん。今のところ、大きな変化はないなあ」
診察室の壁時計は、もう二時半をとうに回っていた。
「そっか」
ぽつりとこぼしたあたしを見つめて、長谷部先生がやわらかく微笑んだ。
「もう少し、様子を見る事にしようか」
「へい」
「あまりストレスをためるような生活はしないでね」
「……うん」
「と、言っても、無理な話だよね」
小さく笑った長谷部先生が、うつむくあたしの頭をぽんと弾いた。
大きな優しい手のひらだった。
「へ?」
顔を上げると、長谷部先生が気遣うように言った。