夏の空を仰ぐ花
本当にうざったい男だ。


一体、なんなんだ。


南高近くのコンビニ前を通過し、少し先の狭い公園前で、あたしはついに爆発してしまった。


「一体、なんなのさ! なんでついて来んの!」


「なんでかなあ」


「お前んち、あっちなんだろ! 帰れよ、うぜえな」


「さんな邪険にしないでよ」


ね、と蓮は涼しい顔をして肩をすくめてみせた。


「ついて来んな!」


「翠ちゃんは帰らないの? この方向、南高に戻っちゃうけど」


お前をまくために、こんなとこまで戻ってきちゃったんだろうが。


空気の読めない男だ。


「あたし、この公園に用事あるから」


つっけんどんに返して公園に入ると、


「偶然。おれも公園に用事があって」


と蓮も一緒に入って来た。


絶対、わざとだ。


あたしの弱みを餌にして、ゆする気か?


「へえ。そりゃ偶然」


適当に返して、あたしは大きな木の下のベンチにどっかり座った。


「うん。偶然だよね」


しれっと答えて、蓮が隣に腰を下ろした。


なんて、したたかなやつだ。


春の夕方の陽射しが真上の枝葉に遮断されて、木漏れ日に変わり降り注ぐ。


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