夏の空を仰ぐ花
妬けちゃうくらい?


「なっ……妬けちゃうって、お前……」


いや、まさかとは思うけど。


それは困る。


あたしは後ろに下がりながら、聞いた。


「お前、あたしに惚れてんのか?」


妬けるって言うくらいだから、そうなのかと思ってしまった。


えっ、と声を漏らしてプーッと吹き出した蓮に、あたしは暴走して返事をした。


「すまん。気持ちは有り難いが、あたしには補欠という……」


次期野球部エースという、こよなく愛している彼氏がいる。


「なに勘違いしてるんだよ!」


「は? だって、お前、妬けるって」


「ああ、例え方がまずかったかな」


それだけは絶対ないよ、と蓮が腹を抱えて大笑いした。


日が暮れて静かになった公園に、蓮の笑い声が木霊した。


「こっちからお断りだよ。翠ちゃんみたいな跳ねっ返りなんてさ」


「んなっ……跳ねっ返りとは何だ! 失礼な!」


あたしが腕に掴みかかると、蓮は慌てた様子で、ごめんごめんと必死に謝って来た。


本当にイヤミーな男だ。


「冗談だよ、冗談!」


「まあ、いい」


フンッと突っぱねて、ベンチに座り直した。


「何ていうのかなあ」


しみじみと、蓮が言った。



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