夏の空を仰ぐ花
「翠ちゃんが早退したあと、夏井くん、うちのクラスに来たんだよ」
「え……補欠が?」
たぶん、あたしと下足棚の前でもめた後だ。
うん、と蓮が頷いた。
「携帯握り締めてさ。佐東さんと三船さんの所に来てたよ」
「結衣と明里に?」
「うん。すごく必死だったよ」
―翠、なんで早退したのか分かんねえ?
―なんか、いつもと様子が違ってて。変でさ
―何回も電話してんのに出ねえんだよ
―お前らも掛けてみてくれねえかな
「って。予鈴が鳴ってもずっと粘っててさ」
―おれ、翠のこと傷付けたかもしれねえや
「泣かせちまった、って。ひどい顔して、A組に戻って行ったんだ」
携帯見てみたら? 、と立ち去ろうとした蓮を、あたしはとっさに引き止めていた。
「ちょっと待て!」
蓮の腕に掴みかかる。
「えっ……何?」
振り向いた蓮はびっくり顔をしていた。
「頼む!」
泣けるのなら、大声を出して泣きたい。
今、目の前に居るのはイヤミー蓮で、補欠じゃないのに。
蓮の向こうに、補欠を見ていた。
必死になって結衣と明里に相談を持ちかける補欠の姿を。
あんなふうにこじれたのはあたしが原因で、補欠は何も悪くないのに。
「え……補欠が?」
たぶん、あたしと下足棚の前でもめた後だ。
うん、と蓮が頷いた。
「携帯握り締めてさ。佐東さんと三船さんの所に来てたよ」
「結衣と明里に?」
「うん。すごく必死だったよ」
―翠、なんで早退したのか分かんねえ?
―なんか、いつもと様子が違ってて。変でさ
―何回も電話してんのに出ねえんだよ
―お前らも掛けてみてくれねえかな
「って。予鈴が鳴ってもずっと粘っててさ」
―おれ、翠のこと傷付けたかもしれねえや
「泣かせちまった、って。ひどい顔して、A組に戻って行ったんだ」
携帯見てみたら? 、と立ち去ろうとした蓮を、あたしはとっさに引き止めていた。
「ちょっと待て!」
蓮の腕に掴みかかる。
「えっ……何?」
振り向いた蓮はびっくり顔をしていた。
「頼む!」
泣けるのなら、大声を出して泣きたい。
今、目の前に居るのはイヤミー蓮で、補欠じゃないのに。
蓮の向こうに、補欠を見ていた。
必死になって結衣と明里に相談を持ちかける補欠の姿を。
あんなふうにこじれたのはあたしが原因で、補欠は何も悪くないのに。