夏の空を仰ぐ花
いつも突っぱねるくせに、いざとなると真っ先にあたしの味方になってくれるようなやつで。


結衣と明里が知ったら、うもふも言わせず補欠のところに走って行くだろう。


ふたりは自分の事をほっぽっても、あたしを最優先してくれるような、ヒーローみたいな親友だ。


補欠がこんなことを知ったら、どうなるか想像がつく。


「あたしごときの事で、補欠に要らん心配かけてらんないのよ!」


だって。


あたし、連れてってもらうんだから。


補欠に、連れてってもらうんだ。


甲子園に。


「頼むよ! 蓮! 言わないで!」


頼む、そう言って奥歯をギリギリ噛むあたしを見て、


「絶対、いつかはバレるよ。絶対」


困ったように、蓮は言った。


「分かったよ。言わない」


その代わり、無理だけはしないでよ、そう言って蓮は彼女のところへ行った。


蓮とは隣の席なのに、深く長く話し込んだのは今日が初めてだった。


弱っちい女だと思われたかもしれない。


なんて強情で意地っ張りな女だと、蓮は呆れたのだと思う。


けれど、少し気が楽になったのは確かで、紛れもない事実だった。


母意外の人間に病気のことを知られて嫌でたまらない反面、ほっとしているあたしが確かにここに居た。


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