夏の空を仰ぐ花
スペシウム光線
恋は、先手必勝だ。
いかなる時も、ライバルに先を越されてはならぬのだ。
教室の窓から空を見上げると、鼻がむずむずした。
「ぶあーっくしょーいっ……こんにゃろーい!」
オッサン並みの豪快なくしゃみをして、あたしは椅子にもたれかかった。
「誰だ! あたしのこと、世界一の美女だって噂してんのは!」
2006年。
9月。
今年は特に、残暑が厳しい気がしてならん。
1年B組。
窓際後ろから2番目の席。
右横の開け放たれた窓から、迷い込むように風が入って来る。
その風になびく、カーテンの裾。
まるで、バニラのソフトクリーム色のオーロラみたいだ。
ひとつ前の席に座り、ポッキーをくわえて睫毛にマスカラを重ねながら、
「うっさいよ、翠。つうか、そのくしゃみオヤジだべ」
結衣がカラカラと笑った。
「黙ってりゃ、めちゃくちゃいい女なんだけどな。翠は」
「ぬっ! パードゥン?」
あたしはムッとした表情で、結衣を睨んだ。
黙ってりゃ、って何だ。
「見た目可愛いし。見かけによらず頭いいし。そのガサツなとこさえ直れば、文句ねえのにさ」
「余計なお世辞じゃ!」
すかさず、結衣が突っ込んだ。
いかなる時も、ライバルに先を越されてはならぬのだ。
教室の窓から空を見上げると、鼻がむずむずした。
「ぶあーっくしょーいっ……こんにゃろーい!」
オッサン並みの豪快なくしゃみをして、あたしは椅子にもたれかかった。
「誰だ! あたしのこと、世界一の美女だって噂してんのは!」
2006年。
9月。
今年は特に、残暑が厳しい気がしてならん。
1年B組。
窓際後ろから2番目の席。
右横の開け放たれた窓から、迷い込むように風が入って来る。
その風になびく、カーテンの裾。
まるで、バニラのソフトクリーム色のオーロラみたいだ。
ひとつ前の席に座り、ポッキーをくわえて睫毛にマスカラを重ねながら、
「うっさいよ、翠。つうか、そのくしゃみオヤジだべ」
結衣がカラカラと笑った。
「黙ってりゃ、めちゃくちゃいい女なんだけどな。翠は」
「ぬっ! パードゥン?」
あたしはムッとした表情で、結衣を睨んだ。
黙ってりゃ、って何だ。
「見た目可愛いし。見かけによらず頭いいし。そのガサツなとこさえ直れば、文句ねえのにさ」
「余計なお世辞じゃ!」
すかさず、結衣が突っ込んだ。