夏の空を仰ぐ花
入学式の日。


クラス分けが貼り出された掲示板の前で、運命に気づいてたんだ。


今だって、そう。


補欠がここに戻って来た時、やっぱり運命だと思った。


これ! 、という明確で確実な証拠なんてないけど。


そう思えて仕方なかった。


今にも泣き崩れそうにふらついたあたしに、


「だから、そんな顔すんなよ!」


補欠が大きな声を出した。


「おれ、こう見えても、ちゃんと考えてるから」


「…………え?」


補欠の目があまりにもまっすぐで、まるで雷に打たれたように、あたしは立ち尽くした。


「おれ、感情表現とか下手だし。何考えてんのか分かんねえって、よく言われるけど」


緩く、緩く、でも休むことなく吹いていた夜風が、時を止めるかのようにピタリとやんだ。


「一日中、翠の事ばっかでさ。情けないけど。お前のことで、頭がいっぱいだ」



その時、一陣の風が公園内を吹き抜けた。


その風は頭上の枝葉を揺らし、あたしの髪の毛をもなびかせた。


数枚の木の葉がはらはら空を切りながら降りて来て、一枚だけあたしの前髪をかすった。


「ほけ……響也……」


その瞬間、あたしは駆け出した。


「翠!」


補欠も駆けて来る。


「不安にさせてばっかでごめんな、翠」


正面衝突。


ぶつかるほどの激しい勢いで、あたしたちは抱き合った。


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