夏の空を仰ぐ花
だけど、無理に無理を重ねた必死のお願いをして、日を延ばしてもらった。
完璧な、あたしの粘り勝ちだった。
地区大会が終わるまでは、どうしても手術を受ける気になれそうもなかった。
補欠が念願のエースになった今、地区大会が終わるまで告白するわけにはいかなかった。
隠し通せると思っていたし、バレないと思っていた。
けれど、いつだって、突然は突如としてやって来る。
真夏の夕方に降る、スコールのような夕立のように。
始業式。
その日は、朝から緩い霧雨が海辺の田舎町を濡らしていた。
朝から、とにかく具合が悪かった。
頭が鉛のように重たくて、痛みはないものの、とにかく重っ苦しくて。
だけど、まさか、そんな深く考えてはいなかった。
おそらく、このグズついたけだるい天候のせいで体調がすぐれないんだ、と思っていた。
「ねえねえ、翠」
そんなあたしの微妙な異変に気づいたのは、朝からさわやかに微笑む蓮だった。
「なにかね?」
「いや、大丈夫なのかと思ってさ」
椅子にもたれた体を少し起こして、あたしの顔を覗き込む蓮が眉間にしわを寄せた。
「今までにないくらい、顔色悪いけど」
「そうかあ? ミラクルハイパー元気だけど」
「なら……いいんだけど、さ」
蓮はすっとぼけた性格なくせに、変なとこで鋭いかから困る。
これも、血筋ゆえなのか。
大学病院の教授であり、あたしの主治医の息子だから、何か感ずるものがあるんだろうか。
完璧な、あたしの粘り勝ちだった。
地区大会が終わるまでは、どうしても手術を受ける気になれそうもなかった。
補欠が念願のエースになった今、地区大会が終わるまで告白するわけにはいかなかった。
隠し通せると思っていたし、バレないと思っていた。
けれど、いつだって、突然は突如としてやって来る。
真夏の夕方に降る、スコールのような夕立のように。
始業式。
その日は、朝から緩い霧雨が海辺の田舎町を濡らしていた。
朝から、とにかく具合が悪かった。
頭が鉛のように重たくて、痛みはないものの、とにかく重っ苦しくて。
だけど、まさか、そんな深く考えてはいなかった。
おそらく、このグズついたけだるい天候のせいで体調がすぐれないんだ、と思っていた。
「ねえねえ、翠」
そんなあたしの微妙な異変に気づいたのは、朝からさわやかに微笑む蓮だった。
「なにかね?」
「いや、大丈夫なのかと思ってさ」
椅子にもたれた体を少し起こして、あたしの顔を覗き込む蓮が眉間にしわを寄せた。
「今までにないくらい、顔色悪いけど」
「そうかあ? ミラクルハイパー元気だけど」
「なら……いいんだけど、さ」
蓮はすっとぼけた性格なくせに、変なとこで鋭いかから困る。
これも、血筋ゆえなのか。
大学病院の教授であり、あたしの主治医の息子だから、何か感ずるものがあるんだろうか。