夏の空を仰ぐ花
「ハハハッ!」


あたしはペシリと頭を叩いて笑った。


「そうとも言うな! フシ穴、フシ穴!」


ちっ。


間違えた。


ギャハハハと笑ってごまかしながら、窓枠に掴まってよじ登り立ち上がった。


ギャーッと何重にも重なったクラスメイトたちの悲鳴が、外にも廊下にも突き抜ける。


「補欠の耳は、フシ穴かあーっ!」


あたしは、彼の背中に向かって思いっきり叫んだ。


黒いスポーツバッグが陽射しを受けて、ピカリと反射した。


「ひーっ、落ちるうっ」


と目を回してぶっ倒れそうな結衣に背中を向けて、あたしは窓枠に掴まり立ちして、胸いっぱいに空気を吸い込んだ。


残暑の暑苦しさも。


うざすぎる蝉時雨も。


空の青さも。


雲の白ささえ。


全部、全部、吸い込んだ。


気付け。


気付け。


「ほーけーつーっ!」


真下で固唾を飲んでいる生徒たちが固まる中、彼は立ち止まり、振り向いた。


気付いた!


「補欠ーっ!」


予感は的中。


彼はギョッと目を見開き、背負っていたスポーツバッグを肩からアスファルトの上にボトリと落とした。


顔を引きつらせて、口をぱくぱくさせている。



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