夏の空を仰ぐ花
「ならば、これはどうだ!」


と今度は両手を大きく広げて、ありったけの力を前に押し出す。


「開けーっ! へそのゴマーッ!」


ちっ。


びくりともせん。


「へそのゴマなんかで開くかっ! バカッ」


もうやだー、と結衣はますますへなちょこ声を出した。


桜並木の急勾配を上った頂上に南高はあって、春の穏やかな空気に包まれていた。


重く閉ざされた鉄格子に触れて、分析開始。


「うむ。2メートル弱ってとこか。ふむ。いけるな、こんくらいなら」


デニムのショートパンツのポケットに忍ばせていた、買ってもらったばかりの携帯電話を、


「ちょっと預かってて」


と結衣目掛けてぽーんと投げた。


「えっ!」


結衣がギョッと目を大きく開いた。


「うわっ!」


慌てて携帯電話を両手でキャッチした結衣が、ハアッと安堵の息を漏らす。


「投げるな! 壊れたらどーすん」


言いかけた言葉を飲み込んで、結衣はまたまたギョッとした。


「翠! ちょっと、何やって」


「ノープロブレム」


固まる結衣に、あたしはニッと笑った。


「強行突破じゃ! これ飛び越えて不法侵入する!」


と、鉄格子を指差す。



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