夏の空を仰ぐ花
例え、今目の前にある彼の姿が幻でCGだとしても。
瞬きをしている隙に消えてしまったら困ると思ったから。
涙が頬から枕に落ちる小さな音がした。
「ウソ」
疑ってかかったけど、でも、やっぱり補欠だった。
どこからどう見ても、正真正銘の。
「嘘じゃねえよ。ほんと」
「補欠……?」
なんで……ここにいんの?
うん、と頷いて補欠はあたしの頬にはり付いた髪の毛を取った。
補欠の左手がすうっと離れて行く。
「や……」
それが嫌で、もっと触れていて欲しくて、あたしは素早くその手を捕まえた。
補欠、だよね?
明日、決勝なんだよね?
なんで……ここにいんの?
睨むようにじっと見つめると、補欠は微妙に目尻を下げて笑った。
「どうしても会いたくて、翠に会いたくて。会いに来た」
やっぱり補欠に間違いないと確信した。
補欠の言葉には無駄な付録は付いてこない。
はだかんぼうで、ストレートで、無防備だ。
一度引いたはずの涙が、気持ちとは裏腹にこんこんと溢れ始めた。
「翠が苦しかった時に、そばにいてやれなくて、ごめん」
あたしは小さく首を振った。
そんなの、どうでもいいよ。
どうでもいい。
だって、こんな大事な時なのに会いに来てくれたじゃんか。
「悪い冗談とか……やめてよ」
普通、明日は大事な決勝戦ですって日に、わざわざ会いに来るようなやついないよ。
補欠くらいだろ。
瞬きをしている隙に消えてしまったら困ると思ったから。
涙が頬から枕に落ちる小さな音がした。
「ウソ」
疑ってかかったけど、でも、やっぱり補欠だった。
どこからどう見ても、正真正銘の。
「嘘じゃねえよ。ほんと」
「補欠……?」
なんで……ここにいんの?
うん、と頷いて補欠はあたしの頬にはり付いた髪の毛を取った。
補欠の左手がすうっと離れて行く。
「や……」
それが嫌で、もっと触れていて欲しくて、あたしは素早くその手を捕まえた。
補欠、だよね?
明日、決勝なんだよね?
なんで……ここにいんの?
睨むようにじっと見つめると、補欠は微妙に目尻を下げて笑った。
「どうしても会いたくて、翠に会いたくて。会いに来た」
やっぱり補欠に間違いないと確信した。
補欠の言葉には無駄な付録は付いてこない。
はだかんぼうで、ストレートで、無防備だ。
一度引いたはずの涙が、気持ちとは裏腹にこんこんと溢れ始めた。
「翠が苦しかった時に、そばにいてやれなくて、ごめん」
あたしは小さく首を振った。
そんなの、どうでもいいよ。
どうでもいい。
だって、こんな大事な時なのに会いに来てくれたじゃんか。
「悪い冗談とか……やめてよ」
普通、明日は大事な決勝戦ですって日に、わざわざ会いに来るようなやついないよ。
補欠くらいだろ。